パーソナルジムを探していると、「4スタンス理論を取り入れています」と書かれた紹介文や、体験の場でタイプの話をされた、という場面に出会うことがあります。名前は聞いたことがあるけれど、それが確立した理論なのか、特定の人が提唱している考え方なのかが分からないまま話が進んでしまう、ということも起こります。
この記事は、4スタンス理論をすすめる記事でも、否定する記事でもありません。誰が提唱しているのか、公開情報から何が確認できて何が確認できないのかを整理し、それを踏まえて利用者としてどう受け止め、トレーナーと何を話せばよいのかまでをまとめます。
- 4スタンス理論を提唱しているのは誰で、どの団体が普及と資格認証を行っているのか
- 「4つのタイプに分ける」という枠組みが、何を説明しようとしているのか
- 科学的根拠について、公開情報から確認できたこと・確認できなかったこと
- 分類を「入口の仮説」として扱うという受け止め方
- 公的な運動指針が拠って立っている原則(漸進性と個別性)との関係
- 4スタンス理論を掲げるトレーナーに、体験のときに確認しておきたいこと
4スタンス理論とは何か、誰が提唱しているのか
まず事実関係から整理します。4スタンス理論は、廣戸聡一氏が提唱する「REASH理論」に含まれる考え方です。普及活動を行っているのは、同氏が代表理事を務める一般社団法人レッシュ・プロジェクトで、同法人は「廣戸聡一提唱のREASH理論および骨理学の普及と理論実践者の育成を目指す」団体として活動しています。また「REASHトレーナー」の資格認証と、そのためのトレーナーズ資格取得カリキュラムを設けています。
ここから分かるのは、4スタンス理論が公的機関や学会が定めた基準ではなく、特定の個人・団体が提唱し、その団体が独自に資格を認定している民間の身体理論である、という位置づけです。これは良い悪いの評価ではなく、情報の出どころを確認したうえで話を聞くための前提です。
民間の理論やメソッドは、トレーニングの世界にいくつも存在します。大事なのは、それが「業界共通の常識」なのか「ある団体が体系化した考え方」なのかを混同せずに聞ける状態にしておくことです。
「4つのタイプに分ける」という枠組みの考え方
4スタンス理論は、重心の位置などから身体の使い方を4つのタイプに分類し、タイプごとに合った動き方がある、とする枠組みです。同じスクワットでも人によって楽に感じる姿勢が違う、同じ指導をしても再現できる人とできない人がいる——そうした「動きの個人差」を説明するための整理として組み立てられています。
なお、この記事では具体的な判定手順は扱いません。簡易的な手順で自己判定すると、その結果を固定した自己像として抱えてしまいやすく、かえって動きの選択肢を狭めることがあるためです。ここでは「4つに分ける枠組みがある」という説明にとどめ、判定が必要かどうかも含めて、実際に指導する人と対面で話すことをおすすめします。
トレーニングの現場では、どんなふうに使われているのか
パーソナルトレーニングの現場で4スタンス理論の名前が出てくるとき、多くは「フォームには個人差がある」という説明の言葉として使われます。教科書どおりの形に当てはめようとしてもうまくいかない人がいる、という現実に対して、その差を説明する枠組みとして持ち出される、という場面です。
この使われ方は、指導の入口として理解しやすいものです。「フォームが間違っている」と言われるより、「人によって動きやすい形が違うので、合う形を探しましょう」と言われるほうが納得しやすい、という人は少なくありません。
一方で、同じ言葉が「あなたはこのタイプだから、この動きはできない」という説明に使われることもあり得ます。同じ理論でも、説明の使われ方によって、選択肢を広げる方向にも狭める方向にも働くということです。どちらの向きで使われているかは利用者の側からも見分けられるので、その確認のしかたを後半で整理します。
科学的根拠について、確認できたこと・できなかったこと
編集部が公開情報の範囲で確認した内容を、確認できたことと確認できなかったことに分けて示します。
確認できたこと。タイプ分類の検査については、検者間信頼性(検査する人が変わっても同じ判定になるか)を検討した学会発表が行われています。足立隼太ほか(国際医療福祉大学 保健医療学部)「4スタンス理論分類検査の検者間信頼性」理学療法科学 35巻 Suppl.2号 26頁、2020年3月1日で、資料種別は会議録記事です(J-GLOBAL 文献情報)。つまり、この分類を検証の対象として扱った発表が理学療法の領域に存在する、ということです。
確認できなかったこと。上記の発表は抄録が公開されておらず、結果の数値を確認できていません。したがってこの記事では、その検討結果がどうであったかには踏み込みません。また、4スタンス理論に基づく指導が特定の成果につながったかを検証した、査読付きの大規模な介入研究の蓄積は、公開情報からは確認できませんでした。
研究の蓄積が確認できないことと、その考え方に価値がないことは別の話です。逆に、確認できていない以上、確立された科学的事実であるかのように扱うこともできません。この記事はどちらにも踏み込まず、確認できた範囲だけを示します。
もうひとつ、比較の材料として挙げておきたいのが公的な指針です。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」には、身体を特定の型に分類してフォームを決める、という考え方は含まれていません。国の指針に載っていないから間違いだ、という話ではなく、公的な指針が拠って立っている原則は別のところにある、という事実です。その中身は後段で扱います。
では、利用者としてどう受け止めればよいか
ここまでを踏まえると、扱いやすい受け止め方はひとつに絞れます。分類は入口の仮説であって、結論ではない、という置き方です。
仮説として使うなら、順番はこうなります。見立てを立てる、実際に動いてもらう、楽に動けたか・痛みや違和感が出なかったかをその場で確かめる、合っていなければ見立てのほうを修正する。仮説は動きを試すきっかけであって、動きを縛るものではありません。
逆に、分類が結論として使われると、「タイプが分かったのだからフォームはこれで決まり」という運用になります。この形になると、実際に動いてみて合わなかったときに調整する余地がなくなってしまいます。同じ理論を使っていても、この2つはまったく別のものです。
タイプを断定されたと感じたときの考え方
体験や初回のセッションで「あなたは◯◯タイプです」と言われ、それが動かせない前提のように扱われたと感じたときは、判定の当たり外れを自分で議論する必要はありません。確かめたいのは判定の内容ではなく、その判定が今後の指導をどこまで縛るのかです。
「実際にやってみて合わなかったら変えられますか」と一言聞けば、扱いが分かります。「動きを見ながら調整します」という答えなら、分類は入口として使われています。答えがそこで止まるなら、その説明で自分が納得できるかを契約前の判断材料にすればよいだけです。合わない感覚を無視して続けるほうが、身体にとってはリスクになります。
公的な指針が拠って立つのは、分類ではなく漸進性と個別性
先ほど触れた身体活動・運動ガイド2023では、成人に対して3メッツ以上の身体活動を週23メッツ・時以上、筋力トレーニングを週2〜3日行うことが推奨されています。そして負荷のかけ方については、日常生活レベル以上の負荷を繰り返しかけ、慣れてきたら少しずつ高めていく(漸進性過負荷の原則)、個人の特性や能力に合わせて実施する(個別性の原則)とされています。
注目したいのは、ここで言う「個別性」が、あらかじめ用意された型に人を当てはめることではない点です。実際の動作を見て、痛みや違和感を聞き、扱えた重さや回数を記録しながら次回の負荷を決めていく。個別性はその積み重ねとして立ち上がるもので、初回に分類して終わり、という性質のものではありません。
言い換えると、4スタンス理論を使っているかどうかにかかわらず、パーソナルトレーニングの土台は同じです。毎回の記録があるか、前回より少しずつ負荷が動いているか、合わなかった種目が差し替えられているか。プログラムがどう組まれ、どう更新されていくのかについては、パーソナルトレーニングのプログラムはどう決まる?個別設計の7ステップと確認ポイントで手順として整理しています。
現在痛みや強い違和感がある場合、しびれや腫れがある場合は、タイプ分類やフォームの調整で解決しようとせず、整形外科などの医療機関を受診して原因を確認してください。トレーニングの再開時期や避けるべき動作は、そのうえで医師の判断に従うのが安全です。運動と身体のケアの組み合わせ方については、トレーニングと身体のケアをどう組み合わせる?整体・整骨院・ストレッチの違いと選び方もあわせて参考にしてください。
4スタンス理論を掲げるトレーナーに、体験で確認したいこと
理論を掲げているかどうかで良し悪しを決める必要はありません。確認したいのは理論そのものではなく、それが指導の中でどう使われているかです。体験セッションや初回カウンセリングで、次の4点を聞いてみると輪郭がつかめます。
| 確認したいこと | 聞き方の例 | 返答から分かること |
|---|---|---|
| 分類だけでメニューを決めていないか | 「種目はどうやって決めていますか」 | 目的・可動域・生活習慣など、分類以外の要素が挙がるか |
| 実際の動きを見ているか | 「今日はどこを見て判断しましたか」 | その場の動作を根拠に説明できるか、一般論に終始するか |
| 合わなかったときに変えてくれるか | 「やってみて違和感があったらどうしますか」 | 代替種目やフォーム調整の選択肢を持っているか |
| 痛みが出たときの対応 | 「痛みが出たときはどう進めますか」 | 中止・受診をすすめる線引きを持っているか |
この4点は、独自の理論やメソッドを掲げるジム全般に同じように使えます。理論の中身を自分で検証する必要はなく、その理論が自分の身体の反応より優先されていないかだけを見れば十分です。
なお、資格や指導経験、相性といったトレーナー選びの一般的な観点は、パーソナルトレーナーの選び方|相性・資格・指導経験で失敗しないポイントにまとめています。また、自分のフォームが説明どおりになっているかを確かめたい場合は、動画を使う方法もあります。使いどころと限界はトレーニング動画はどこまで使える?フォーム確認・自撮りチェック・対面指導との使い分けで整理しています。
よくある質問
Q. パーソナルトレーニングを受けるなら、自分のタイプを知っておくべきですか?
A. 知らなければ始められない、というものではありません。公的な運動指針は分類を前提にしておらず、負荷を少しずつ高めることと、個人に合わせて調整することを基本にしています。優先順位としては、目的・現在の体力・痛みの有無を共有するほうが先です。
Q. 4スタンス理論を掲げているジムは避けたほうがよいですか?
A. 掲げていること自体を理由に避ける必要も、選ぶ理由にする必要もありません。判断材料になるのは理論の名前ではなく、その日の動きを見て説明してくれるか、合わないときに変えてくれるかという運用の部分です。
Q. タイプが違うと、同じ種目でもフォームは変わるのですか?
A. 分類とフォームの対応について、査読付きの大規模な研究の蓄積は公開情報からは確認できませんでした。一方で、四肢の長さや関節の可動域、目的などによって同じ種目でも扱いやすい形が変わることは一般に知られています。分類だけで決まると考えるより、実際に動いて調整していく前提で受け止めるほうが扱いやすいはずです。
Q. 関連する資格を持っているトレーナーなら安心ですか?
A. レッシュ・プロジェクトはREASHトレーナーの資格認証とカリキュラムを設けており、これは民間団体が独自に認定している資格です。資格の有無は「その理論を体系的に学んだ人である」という情報にはなりますが、指導が自分に合うかは別に確認が必要です。実際のセッションで、説明の分かりやすさや質問への答え方を見て判断してください。
Q. タイプに合わせたと言われたフォームで、痛みが出ました。どうすればよいですか?
A. その場で中止し、痛みが続く場合は医療機関を受診してください。理論に沿っているかどうかより、身体の反応が優先です。姿勢の左右差や反り腰などが気になって相談したい場合は、パーソナルトレーニングでできること・できないことを姿勢が気になるときパーソナルトレーニングで何ができる?できること・できないことの整理で確認しておくと、相談の範囲を切り分けやすくなります。
まとめ
4スタンス理論は、廣戸聡一氏が提唱するREASH理論に含まれる考え方で、一般社団法人レッシュ・プロジェクトが普及と資格認証を行っている民間の身体理論です。分類検査の検者間信頼性を検討した学会発表は存在しますが抄録は非公開で、査読付きの大規模な介入研究の蓄積は公開情報からは確認できませんでした。確立された科学的事実として扱うことも、価値のないものとして切り捨てることもせず、位置づけを知ったうえで付き合うのが現実的です。
利用者にとって使いやすい置き方は、分類は入口の仮説であって結論ではないという一点に尽きます。実際に動いて、合えば続け、合わなければ変える。公的な指針が示す漸進性と個別性は、その積み重ねの先にあります。体験の場では、種目の決め方・その日の動きの見方・合わなかったときの対応・痛みが出たときの線引きの4つを聞いてみてください。
※ 本記事はパーソナルナビ編集部による一般的な情報整理であり、特定の理論・団体・店舗を推奨または否定するものではありません。医学的な診断・治療・施術の代わりになるものでもありません。痛み・しびれ・不調がある場合、既往症のある方、服薬中・妊娠中の方、高齢の方は、自己判断で運動を始めず、担当医の判断を優先してください。トレーニングの効果や身体の反応には個人差があります。料金・提供サービス・資格制度の詳細は、各店舗および各団体の公式情報で最終確認してください。

