パーソナルトレーニングでストレッチは必要?目的別の取り入れ方と伝え方

パーソナルトレーニングを受けていると、「今日はストレッチが長かったな」「そもそもこの時間は必要なんだろうか」と感じる場面があります。1回のセッションで何分を何に使うかは、そのまま料金の使い道でもあるので、気になるのは自然なことです。

結論から言えば、ストレッチは全員に必須のメニューではなく、目的があるときに、その目的に合わせて入れる手段です。この記事では、公的資料が示す範囲で分類と原則を整理し、セッションの前・中・後での位置づけと、希望をトレーナーに伝える言い方までをまとめます。

この記事でわかること
  • ストレッチが「静的/動的」×「セルフ/パートナー」の4つに分かれること
  • 公的資料が示している内容と、そこから言えないこと
  • セッションの前・中・後で、ストレッチの目的がどう変わるか
  • 正しく行うために挙げられている5つの原則
  • 可動域・張り・デスクワークという目的別の取り入れ方
  • 時間配分・触れられ方・痛みをトレーナーに伝える言い方
白い部屋で2人の女性が脚を大きく開き、上体を横に倒して伸ばしている様子

まず整理:ストレッチは4つに分かれる

「ストレッチ」と一語でまとめてしまうと、話がかみ合わなくなります。厚生労働省 e-ヘルスネットの「ストレッチングの実際」では、関節の動きの有無によって静的(スタティック)動的(ダイナミック)に分かれ、さらに一人で行うセルフか二人組で行うパートナーかでも分かれるため、合わせて4つに分類されると説明されています。

パーソナルトレーニングの現場では、自分でポーズを取って止めるのがセルフの静的ストレッチ、トレーナーが手を添えて脚や腕を動かすのがパートナーのストレッチにあたります。「ストレッチをお願いしたい」と言ったときに期待とずれが生じるのは、この4つのどれを指しているかが共有されていないためです。

同じ資料では、健康づくりの現場について「安全第一で、傷害のリスクが少ない静的ストレッチングが用いられることが多い」と述べられています。これは静的ストレッチという方法そのものが取り組みやすいという意味で、ストレッチをすればケガを避けられるという意味ではありません。予防効果を言い切れる記述ではない、と受け止めておくのが正確です。

また「柔軟性の向上の効果に関しては静的ストレッチングが動的ストレッチングに劣ることはないことがわかっている」とも記載されています。柔らかくなりたいという目的であれば、動的なものでなければいけない、という話にはならないということです。

もう一点、見落とされやすいのが「正しい方法で実施しなければ効果も十分に期待することができません」という指摘です。時間を割いたかどうかではなく、やり方が伴っているかで変わるということです。ストレッチは有酸素運動や筋力トレーニングと併せて行うと効果的だとされており、単独で完結するものではなく組み合わせの一部として位置づけられています。

この記事で書かないこと

ストレッチによって筋肉が大きくなる、といった説明は上記の資料の範囲を超えます。筋肉量を増やす目的での設計は筋肥大を目的にパーソナルトレーニングを使うには?で扱っています。

セッションのどこで何をするか

ストレッチが必要かどうかは、「どこに、何のために置くか」を分けると判断しやすくなります。同じ動作でも、開始前と終了後では狙いが違うためです。ただし「前は動的、後は静的」と一律に定めた公的な決まりがあるわけではありません。下の表は効果を保証する分類ではなく、自分の希望とトレーナーの意図をすり合わせるためのたたき台として使ってください。

場面 主な目的 選ばれやすいもの 注意したい点
セッション前 体を動かす準備をする/その日の動きの範囲を確認する 関節を動かしながら行う動的なもの、軽い有酸素運動との組み合わせ ここが長くなるとメイン種目の時間が削られる
セッション中(種目の合間) その種目のフォームを作れる範囲まで動きを出す/使う部位を意識しやすくする 対象部位に絞ったセルフ、またはトレーナーが補助するパートナーのもの その日の種目に関係する部位に限定する
セッション後 動かした部位をゆるめる/呼吸を整えて終える 静的なもの(20秒以上かけて伸ばす) 痛みが出る強さまで伸ばさない
自宅・通わない日 日常で固まりやすい部位を自分で扱えるようにする セルフの静的なもの(種目数を絞る) やり方が曖昧なまま続けない。セッションで確認する

使い道が一番あるのは右端の「注意したい点」です。開始前のストレッチが毎回長いと感じるなら、それは準備なのか、ほぐすこと自体がメニューになっているのかを一度確認する価値があります。良い悪いではなく、自分が何に時間を払っているかを把握できていれば十分です。

正しく行うために挙げられている5つの原則

前述の e-ヘルスネットでは、ストレッチを正しく行うための原則として次の5点が挙げられています。トレーナーの説明を聞くときにも、自宅で自分でやるときにも、この5点が満たされているかが確認の軸になります。

  • 20秒以上かけて伸ばす。最初の5〜10秒は伸展度合いを決める時間とされています。数秒で切り上げる形は原則から外れます。
  • 伸ばす部位を意識する。どこが伸びているか分からないまま形だけ取っている状態を避けます。
  • 痛くなく気持ちよい程度に伸ばす。痛みを感じるほど伸ばすと伸張反射が働き、効果が下がるとされています。
  • 呼吸を止めない。血圧の上昇や緊張の増加を防ぐためと説明されています。息を止めて耐えるのは原則に反します。
  • 目的に応じて部位を選ぶ。全身を順番になぞるより、何のためにどこを伸ばすのかがはっきりしている方が原則に沿います。

3つ目の「痛くなく気持ちよい程度に」は、行き違いが最も起きやすい点です。「痛いほど効いている」と我慢してしまう人は少なくありませんが、資料の記述はその逆で、痛みが出るほど伸ばすと効果が下がる方向に働くとされています。我慢は目的ではありません

痛みがあるときはトレーニングの前に医療機関へ

すでに痛みがある、しびれる、動かすと鋭く響く、といった状態のときは、ストレッチで様子を見るのではなく、まず整形外科などの医療機関を受診してください。トレーナーは医療行為を行う立場ではありません。受診後も、医師の指示の内容を共有したうえで、その範囲で進めてもらうのが安全です。

椅子に片脚を乗せて脚の後ろ側を伸ばしている、一人で行うストレッチの姿勢

目的別の取り入れ方

「必要か」を一般論で考えても答えは出ません。自分が困っていることから逆算すると、入れるかどうかと、どれくらい時間を割くかが決まります。よくある3つのケースで見てみます。

ケース1:動く範囲が足りず、フォームが作れない

しゃがむと踵が浮く、腕が真上まで上がらない、といった理由で狙った種目のフォームが取れないことがあります。この場合のストレッチは「ケア」ではなく、その日の種目を成立させる準備です。全身に広げず、その種目に関わる部位に絞ってもらうほうが時間の使い方として効率的です。

可動域の問題は、種目の選び方や順序でも調整されます。どんな根拠で組まれているかはパーソナルトレーニングのプログラムはどう決まる?で扱う個別設計の話につながるので、「今日はなぜこの順番なのか」を聞ける関係になっていると、ストレッチの位置づけも一緒に説明してもらえます。

ケース2:トレーニング後に張りや硬さが残る

動かした部位に張りが残るのが気になるなら、セッション後に静的なものを短く入れてもらう形が扱いやすくなります。20秒以上かけて、痛くない範囲で、呼吸を止めずに。原則を当てはめればやり方は決まります。

ここで大事なのは、張りと痛みを分けることです。数日たっても引かない痛み、動かさなくても続く痛みは、ストレッチで対応する範囲ではありません。前述のとおり医療機関の判断が先になります。

ケース3:デスクワークで同じ姿勢が続く

座っている時間が長い人ほど、セッションのストレッチを心地よく感じます。ただし、週1回まとめて伸ばして取り返すという使い方より、日常の中で動く機会を増やしつつ、セッションでは自宅で再現できる形を教わるほうが現実的です。原則の5つ目に沿って、自分が固まりやすいと感じる部位を2〜3か所に絞って持ち帰ると続けやすくなります。

姿勢そのものが気になる場合にパーソナルトレーニングでできること・できないことは、姿勢が気になるときパーソナルトレーニングで何ができる?で整理しています。

「パーソナルストレッチ」というサービスとの違い

街には「パーソナルストレッチ」「ストレッチ専門」と掲げた店舗もあります。パーソナルトレーニングの中で行うストレッチとは目的も時間の使い方も違うため、混同したまま申し込むと「思っていたものと違った」となりやすい部分です。

  • 運動指導の一部としてのストレッチ:その日の種目を成立させる、または動かした後を整えることが目的。セッション全体の一部分で、時間配分はトレーニング内容に従って決まります。
  • ストレッチ専門のサービス:施術者が伸ばす時間そのものが商品。1回の枠がまるごとそこに使われ、筋力トレーニングの指導は基本的に含まれません。
  • 選び方の目安:筋力をつける・体組成を変えることが目的ならパーソナルトレーニング、伸ばしてもらう時間そのものが欲しいなら専門サービス、という切り分けになります。

料金とサービス範囲は店舗ごとに違うため、契約前に公式情報で確認してください。整体・整骨院・マッサージを含めた「誰が何をできるのか」という資格・業務範囲の違いは、整体・整骨院・ストレッチの違いと選び方にまとめてあります。

トレーナーが横向きに寝た女性の脚を持ち上げて伸ばす、二人組で行うストレッチの場面

トレーナーへの伝え方と、行き過ぎになりやすい場面

ストレッチの扱いで不満が残るのは、希望が伝わっていないだけのことが多くあります。言いにくい内容ほど、短い言葉にして早めに渡しておくと、後から言い出す負担が減ります。

時間配分の希望

「ストレッチを減らしてほしい」ではなく、「重さを扱う時間を優先したいので、ストレッチは最後に短めで」と目的とセットで伝えると意図が通りやすくなります。逆に「終わったあとの硬さが気になるので最後を少し多めに」と頼むこともできます。どちらも遠慮のいらない相談です。

触れられ方の希望

パートナーで行うストレッチでは、トレーナーが体を支えたり動かしたりします。触れられること自体に抵抗がある、この部位は避けてほしい、といった希望は事前に伝えて構いません。セルフのストレッチに切り替えてもらう選択肢もあります。契約前に確認したい点や、その場で違和感があったときの対処はパーソナルトレーニング中の身体接触が気になるときの対処法で扱っています。

痛みの伝え方

感覚を3つに分けて言葉にすると伝わり方が変わります。「伸びていて気持ちいい」「伸びすぎて痛い」「しびれる・響く」。後ろの2つは、その場で止めてもらう合図です。特にしびれや鋭い痛みは続けずに中止し、必要に応じて医療機関で相談してください。

行き過ぎ・逆効果になりやすい場面

  • セッションの大半がストレッチで終わり、当初の目的だった運動の時間が残っていない
  • 痛みを我慢して伸ばしている、息を止めて耐えている(いずれも原則から外れます)
  • 反動をつけて無理に可動域を広げようとしている
  • 体調がすぐれない日や痛みがある部位に、そのまま同じメニューを続けている

どれも「やってはいけない」というより、目的から外れていないかを確認する合図です。気づいた時点で伝えれば、その日のうちに調整できます。

よくある質問

Q. ストレッチだけのセッションをお願いできますか?

A. 対応方針は店舗やトレーナーによって異なり、運動指導が前提のプランではストレッチのみの回を想定していない場合もあります。伸ばしてもらう時間そのものが目的なら、ストレッチ専門のサービスを別に使うほうが合うこともあります。契約前にどこまで柔軟に組めるかを確認しておくと安心です。

Q. 伸ばしていて痛いのは効いている証拠ですか?

A. そうとは言えません。e-ヘルスネットでは「痛くなく気持ちよい程度に伸ばす」ことが原則として挙げられており、痛みを感じるほど伸ばすと伸張反射が働いて効果が下がるとされています。痛みは強度の指標ではなく、止める合図として扱ってください。

Q. 自宅でやるなら、何を優先すればいいですか?

A. 種目数を増やすより、5つの原則を守れる形にすることが優先です。どの部位を選ぶかは目的次第なので、セッションで実際にやり方を見てもらい、自分で再現できる状態にしてから持ち帰るのが確実です。

Q. ストレッチを増やせば、ケガをしにくくなりますか?

A. 今回参照している公的資料に、そう言い切れる記述はありません。健康づくりの現場では傷害のリスクが少ない静的ストレッチングが用いられることが多い、と述べられているにとどまります。扱う重量や動作の進め方、体調に合わせた調整も含めてトレーナーと相談し、痛みがあるときは医療機関の判断を先に置いてください。

まとめ

ストレッチは、パーソナルトレーニングに必ず入れなければならないメニューではありません。動く範囲が足りずフォームが作れない、終わったあとの張りが気になる——そうした具体的な理由があるときに、目的に合わせて場面と時間を決めるものです。判断の材料は、4つの分類と、20秒以上・部位を意識・痛くない範囲・呼吸を止めない・目的に応じて部位を選ぶという5つの原則で足ります。

あとは、時間配分の希望、触れられ方の希望、痛みの伝え方を短い言葉で渡しておくこと。この3つが伝わっていれば、セッションでのストレッチの扱いはたいてい調整できます。痛みやしびれがあるときは、伸ばして様子を見るのではなく医療機関へ。

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※ 本記事はパーソナルナビ編集部による一般的な整理であり、診断・治療にあたるものではありません。効果や感じ方には個人差があり、特定の成果を保証するものではありません。痛み・しびれ・体調の不安がある場合は、自己判断で継続せず医療機関にご相談ください。既往症のある方、服薬中の方、妊娠中の方、高齢の方は担当医の判断を優先してください。料金・サービス内容・提供メニューは変更される場合があるため、契約前に各店舗の公式情報で最終確認をお願いします。